文部科学大臣賞 科学技術振興功績者

功績名 無機質無溶剤常温硬化塗膜形成主剤の開発
功績者 鈴木富男
本功績の概要 人間社会が乗っている地球船も環境破壊、汚染、公害や、又資源の保護から省資源、省エネルギーの課題で工業、科学産業の英知が期待されている、塗料も社会資産の建造物や構造物の耐久保全を担う産業資材として次世代に求められる、無公害、省資源、経済性と機能性(燃えない、腐らない、劣化しない)に優れた保護膜資材として、石油化学からの誘導原料によらないポリオルガノシロキサンによる、無機質無溶剤の塗料「セラトン」を、専用プライマーとして無溶剤特殊有機樹脂複合の「セラニック」の開発。

開発時期 : 平成2年

実利用化時期 : 平成3年

従来技術の概要
  1. 保護膜機能や都市景観に貢献している塗料は塗膜形成材主剤(結合剤、接着剤)の材質によって膜機能は大きく左右されるが、20世紀前半までは海草、膠、松脂、コパル、油脂類(亜麻仁油、支那桐油、)等を結合剤としての製品化で、耐久性、強靭性に欠け、色焼け等の商品機能に欠ける面があった。

  2. 20世紀後半に石油科学の発達に伴なって石化資源より合成樹脂類が開発され主剤としての研究が進み、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニール樹脂等が開発され有機合成樹脂を有機揮発性物質等(VOC)で調整された塗膜形成主剤とする塗料商品が今日の主流となっている。
従来技術の問題点
  1. 有機系材質による塗膜形成主剤(結合接着剤)は分子の結合エネルギーが弱く、経時過程で結合主鎖の切断(チョウキング)が起こり、水分や酸素など複合環境では劣化が特に進み、短期でのメンテナンスが必要となる。

  2. 石油化学からの誘導物質である有機合成樹脂系の結合剤は燃焼時には多量の有害ガスを発生する。

  3. 有機樹脂塗料は副資材として有機揮発性物質(VOC)を多く必要とし、不快感、頭痛,吐き気などの症状(シックハウス症候群)の原因となる他、環境汚染や公害を引き起こすとの指摘があり、文部科学省では1立方メートルあたり260マイクログラムとの規定が設定されている。

本件技術の概要
  1. 有機樹脂及び有機揮発性物質を使用せず、シリコーンの一種であるオルガノポリシロキサンを主剤とした無溶剤無機質塗料を開発し、空気中の温度と湿気によって常温で硬化が促進され、従来の有機結合よりも20%も強い無機結合による塗膜形成を実現した。

  2. 上記、無溶剤無機質塗料と無溶剤特殊有機樹脂を配合することで、強密着性・折曲性・衝撃性・膨張追従性等に優れた、プラスチックやメッキ面にも塗布可能な無溶剤2液型プライマーを開発した。

  3. 無機質であるため、不燃、耐熱性で紫外線、光エネルギー波長での材質変化は起こらず、撥水性で膨潤、軟化する事無く、ガラス質の耐酸性がある超耐久性の塗料が実現した。

本件による効果
  1. 環境汚染や公害を及ぼしたり、環境病やシックハウス症候群の要因となる化学物質は使用はない。

  2. 超耐久物性材質の特長からメンテナンスフリーでの、省エネルギー効果がみこまれる。

  3. 静電気を持たない塗膜で耐汚染性に優れている。

  4. 施工者の健康管理面での安全と作業性が良い。

  5. 微生物の餌となる有機物が含まれていないためにカビ等の繁殖が無く大気中に飛散したカビを吸込んで、頭痛・鼻炎等アレルギーを起こすことが無い。

推薦機関:財団法人 新技術開発財団

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